悠々 カヤック:写真紀行
[(6)多鯰ヶ池の四季]
遊覧船の桟橋廃墟:渇水期の2020/10/25(左)。雪解け水で増水し、光景が激変2021/2/21(右)★は同じ場所
本シリーズ「(3)睡蓮の花園を愛でる」(2022年7月号)の姉妹編です。
多鯰ヶ池での初出艇は、還暦記念で始めたカヤック11年目の2020年10月25日(日)でした。
10年間は夏季限定の出艇でしたが、齢70歳を過ぎて、「今が一番若い!」との妙な感覚を抱き、「秋まで漕ぐ!」ことにしました。私事、多鯰ヶ池の思い出です。1972年夏季当時、東南部・観光梨園がある界隈に桟橋があり、貸しボートが営業していました。人生で初めて(で最後)の彼女と、二人乗りボートを漕ぎ合ったのですが、東側の湖域限定でした。その後、半世紀が経ちました。
また、砂丘トンネルを抜けて直ぐの多鯰ヶ池の西南端の地、車道から歩道を降りた桟橋で、朱色に塗られた立派な屋形船の遊覧船に乗り、ゆっくりと周遊した記憶があります。但し、写真等の記録がなく、年代の記憶は失せています。Web検索でもヒットしません。どなたかご承知でしょうか?→ ◆(末尾)
緑が豊かな11月(左)。同地点の2月は落葉樹の樹幹・枝のみで、昔の遊覧船が透けて見えた(中)。望遠撮影(右)
屋形船での優雅な遊覧を体験した際、多鯰ヶ池の形状の複雑さ、環境の変化に驚いた記憶もあります。西南端から南岸沿いにゆっくりと船が進み、樹木の枝に手が届きそうな急崖地などを思い出します。
さて、小春日和に誘われ、2021年2月21日(日)に出艇した際、西南端の桟橋廃墟の隣接地で、落葉樹の葉が落ちていたことで、樹幹・枝の奥に当時の遊覧船が放置されているのを、驚きを持って、発見しました。落葉樹の葉が落ちる前の2020年10月25日、11月15日は緑豊かな環境であり、奥が見通せませんでした。いわば、冬季限定で、湖面から優美な遊覧船を眺めることが出来るのです。
2020年秋に見た中央部の暗礁地帯:石灯籠がある磯の御前島、左・西には沖の御前島と岩が帯状に連なる地
多鯰ヶ池で漕ぎ始めた当初、湖面の水位が季節により大きく変わることについて、全く無知でした。
結果論ですが、2020年の秋は、2021年秋との比較で、湖面の水位がかなり低かったのです。
多鯰ヶ池の中央域に、石灯籠がある 磯の御前島、左・西に 沖の御前島 を眺めました。その西方に岩が帯状に連なる地もあり、カワウが羽を休めていました。なお、カモ類は湖山池・湖山川と比べて数が少なく、このことにも驚きました。貧栄養湖であり、餌になる魚が少ないためかもしれません。
★に注目=南湖域のジャングル地帯の水位差:2021/5/3(左)と渇水期は出雲大社のしめ縄様の根 10/30(右)
渇水期には、南の丘陵地が迫る地を除き、釣り客が湖畔の砂地や砂岩と思える地帯などを歩いて移動し、釣りをする様子を眺めます。小生は釣りの支障にならないように、迂回しつつの漕艇です。また、エンジン付の小型舟を足で操り、釣り糸を垂らす人も散見します。各々釣れている様には出会いません。
季節により、湖面の水位が大きく変わることは、いくつかの地点で見取れます。湖岸の散策可否に係る環境、遊覧船桟橋の廃墟(冒頭)、暗礁の出没、南側のジャングル地帯の光景などです。それらを体感的に(写真撮影を含め)知り得たのは、通年的に出艇し得た成果と言えます。勿論、無価値の“成果”に留まります。齢70歳を過ぎてからのことであり、自己満足の世界です。(笑)
5/3に3艇5人の家族と遭遇(左)。達人の彼から「咲き始めた」の情報を得て出艇:日の出(中)と睡蓮(右)
風が強く、湖山池での出艇を諦め、ダメモトで多鯰ヶ池に行き大正解!“惚れ込んで”出艇を重ねました。2021年5月3日は、日本海での体験カヤックが風・うねりで回避されたためか、予想外に多くの艇が出ていました。また、ファミリーカヤックの5人とも遭遇し、年季の入った艇を漕いでいた父と情報授受の関係になりました。「咲き始めた」との報を得て、5月15日は日の出前に出艇し、撮りました。
5/3は業者カヤックが多く出艇(左)。SAP 3艇も(左下)。10/30修学旅行の中学生が体験カヤック(右)
2021年10月30日(土)は、北東端の出艇地に着いた時点で、数多くのカヤックが並んでおり、かつ、11時前の到着だったため、出艇地に次々と戻るカヤックも眺めました。反時計回りに漕ぎ、13時を過ぎた2周目の後半にもグループ毎の体験カヤック隊と遭遇。この日、3周して艇を上げ際、後片付け中の彼女が声をかけてくれたことで、尋ねると「大阪の中学生が修学旅行に来て、午前、午後に分けての体験カヤックで、延べ約160艇。地元の2業者が艇を集めて」とのでした。出会いも楽しい。
秋色の多鯰ヶ池:北岸中央(左)。砂丘が伸びて地続きになった大島にあるお種弁財天の森(右):2021/10/30
多鯰ヶ池の四季・・・。
紅葉は所々で色づく程度です。春の桜はありません。東南部の観光梨園は湖岸から樹木が離れており、梨の花を愛でることはできません。各所にある睡蓮の群落が咲く季節は、カヤックの楽園となります。
季節による湖面の水位変化は驚くほど大きく、流入河川・流出河川とも皆無で、高い透明度を保持していることも多鯰ヶ池の特徴でしょう。とくに、雪国であり、南側の丘陵地に積もった雪が解けて、春先にはせせらぎともなり、かつ、伏流水・湧水があることで、冬季の水位は大きく増します。
渇水期は北東の湖岸は鳥取砂丘同様の砂浜(左)。伝説の小島にある赤い鳥居(中)。増水期は湖中に映える(右)
多鯰ヶ池の渇水期は、出艇地である北東側に砂丘と同じきめ細かい砂の浜が出現します。初めて気づいた際は感動しました。冬季は、湖畔の樹木の根元まで水位が上がり、歩いての移動は不可能です。
多鯰ヶ池で唯一湖上にあり、四季を通じて、美しい緑を保っているのがお種伝説の小島です。水位変化の目安として西側にある(観光梨園へアクセスする自動車道からは見えない)赤い鳥居が撮れていた写真を対比しました。
なお、暗礁で、渇水期に姿を見せる 磯の御前島、沖の御前島 の名称は、今回調べて知りました。各種の地図を見ましたが、唯一、国土地理院の写真が渇水期の撮影であり、両島が見えています。
P:駐車場。出艇地、 O:砂丘が伸びて陸続きになった大島(お種弁財天の森)、 S:睡蓮の群落:地理院地図の撮影日時は不詳で、現在は群落規模が大きくなり、中小群落が増加、 →:お種伝説の小島、 ↑:石灯籠がある 磯の御前島 (西側に 沖の御前島)、 ←:ジャングル地帯、 ↓:遊歩道の湖畔展望地。西南端に廃墟と化した遊覧船桟橋の屋根があり、当時の遊覧船も確認できた(拡大写真)
多鯰ヶ池は四方に自然が迫る窪地にある堰止湖で、(悪天候の際は確認していませんが、)風・波に悩まされることなく漕艇できるカヤックに適した広さです。湖山池と対比してみました。
= = =
◆ 鳥取県立中央病院時代の彼が「屋形船の座敷で、(和船ゆえ)火は使えなかったが、専門分野の仲間と宴会をした」記憶を語ってくれました。その情報を基に、小生も乗船体験したのでしょうか・・・。
写真は入手し得ていません。どなたか情報をお持ちでしたら、ご教示ください。
_/ _/ _/
◆ 鳥取県東部医師会報 2023年1月号 p.25-30の原稿です。
[次(7)へ]