悠々 カヤック:写真紀行
[(18)スイスで漕げた / ブリエンツ湖]
08:34出艇(左) 列車! アーレ川に架かる鉄道橋(右)。記念の自撮り
沖縄と同様に自艇を持参し、スイスでカヤックが漕げたことに自己満足の爺。還暦記念に始めたカヤックが、想定外に継続し得ていることに感謝しつつの人生です。カヤック初出艇から約10年を経て、新型コロナウイルス感染症(新コロ)禍になり、「三蜜を避け得る」出艇回数が2020年シーズンに急増。沖縄のサンゴ礁の海に端を発し、スイスの湖でカヤックをする発想は、新コロ禍中の体験が発端でした。
2024年7月6日(土)ベルナーオーバーラント地方、ブリエンツ湖の南西端、ベーニゲンBönigen地区の静寂な地で出艇しました。ブリエンツ湖はインターラーケンの街でアーレ川となり(、西側のトゥーン湖に連なり)ます。その移行部に鉄道橋が架かり、Rowing Club Interlaken(冒頭組写真右の建物)があります。その横の小さな浜で出艇しました。周囲は、散策、自転車の人たちが行き交う地です。
出艇準備完了!の際に、列車が通過し、幸い撮れました。年齢制限なしの撮り鉄行動です。
08:46 出艇地が遠のいた(左)。ブリエンツ湖の色合い(中)。崖下の付近は業者カヤックのコース (右)
「アルプスから流れ出るミネラルを多く含む湖水は、刻々と深い青色、緑色などその色を変化させ、時にターコイズ(トルコ石)ブルーやエメラルドグリーンなど宝石に例えられ」の解説が[Brienz at a glance](スイス政府観光局)にあります。私事、2005年、バス車窓からの初体験時に強い印象を抱きました。なぜ、ブリエンツ湖の色合いが際立つのか・・・。氷河がえぐった谷底の深い湖であるが所以?
一方、スイスアルプスが造山運動により形成され、太古の海で会った地が隆起した形跡は当地でも視認できます。ブリエンツ湖の西南端は褶曲した岩盤がむき出しになっており、静寂な環境でもあって、カヤック初心者向けの漕艇コース(業者企画)になっています。
09:08 Ringgenberg城址(左)とHotel Seeburg (右)は界隈のランドマーク
少し北に移動すると、キリスト教会と見間違えたBurgruine Ringgenbergリングゲンベルク城址が目立ち、ランドマークです。この湖岸には観光船用の桟橋があり、Seeburg(湖畔城)が名称のホテルHotel Seeburgが環境を脚色しています。鉄道駅やポストバス駅がない不便な地で、乗用車・レンタカーでない場合は観光船が交通手段となる地です。観光船の着岸時は、数人の客を目にする程度です。
湖岸の景色・色合いに惹かれて撮影(左)。白い山(右上):拡大し確認:Blümlisalphorn と診た
グリンデルワルト東側の峠、グロッシェ・シャイデックから眺める山頂の形状は、左Mönch4110m、右Eiger3970mに似ています。が、ブリエンツ湖からの方角は全く異なります。で、「Hello! From the middle of Brienzersee, we can see a high mountain in the direction of Bönigen. Checking the direction, I think it is Blümlisalphorn - 3661m. Please teach me the correct name of the high mountain. Thank you !」と下手な英文を書き、Brienzer Rathaus (www.brienz.ch/ ) に問い合わせをしましたが、返信は未・・・。
運航本数は少ないのですが、カヤックでの湖上散歩中、観光船との遭遇は嬉しいシーンです。BRIENZ号がブリエンツへと進む様子を記念撮影。一方、湖岸を走る列車の走行も見逃さずに撮影を試みました。この路線はDie Zentralbahnなる私鉄で、目玉はビストロカーを含めた10両編成の観光急行、愛称は「Luzern-Interlaken Expresss」で、車体の赤色が環境に彩を添えてくれます。
観光船BRIENZが近接:右奥・南が出艇地方向(上)。西側湖岸はレジャーハウスが連なり鉄道も(下)
観光急行は1時間毎の運行で、往復ですから、30分に1本が走行していることになります。加えて、3両の地域列車を含めると15分毎。とは言え、撮影には条件が整うことが必要です。
特上の環境に居て観光急行が近接:撮影成功(上)。目的の桟橋(下左)から対岸へと漕艇中(下右)
鉄道線路が湖岸に展開している地において列車が通過する際、見逃さず、タイミングが良ければ撮影が可能になります。即ち、稀有な機会と評せます。今回は、幸い、撮影機会に再々恵まれました。
南西湖域を北上するカヤックのコースは、Niederriedニーダーリートの桟橋から対岸・東方向へ約3km漕ぐと決めていました。幸い、無風に近く、多少日が射す程度で、炎天下の漕艇ではなく、つまり、条件に恵まれたブリエンツ湖の横断(:氷河が起因のブリエンツ湖は深さ約200m~湖面は凪)でした。
概して崖が連なる東側は、午前中は陽光の影になるので、考慮して漕艇ルートを設計した次第でした。ブリエンツ湖の南北の中程に居て、次の目標地は東岸の観光保養地Iseltwaldイゼルトヴァルトです。
東湖岸を漕艇中、環境に魅せられていたら(下)、観光船がイゼルトヴァルトに来るのが見え急ぎ近接(上)
西岸から東岸に漕ぎ終え、環境に魅せられていたら、対岸から観光船が来るのが見えました。 少し急ぎの漕艇をし、イゼルトヴァルトの桟橋付近に到着。ほぼタイミング良く、観光船BRIENZが桟橋に到着し、乗船客の動きを含め、眺め得ました。稀有な機会ゆえ、出航する様子の動画撮影も。
名称不明の優美な館:西から(左上)、北から撮影(右上)。東岸は憩いの地(左下)。近くで休憩(右上)
賑わう界隈を北に漕ぐと、半島状に伸びた先に(Google等の地図で名称が得られない)優美な館があり、観光船からも多くの乗船客が眺め、撮っています。富豪が保有する館なのでしょうネ。
転じて、2022年7月に沖縄本部半島の屋我地島周囲を漕いだ際、20kmを越える距離で、漕艇約8時間、前後を含め約10時間屋外に居たのです。過去に実績のない、自身にとっては長距離・長時間のカヤックでしたが、日焼けを除けば、幸い、筋肉疲労は軽微で、翌朝には軽快していました。
この体験を基に、スイスの湖で20km前後の漕艇コースを設計して臨んだのです。が、考えが甘かったとの自己評価に至りました。
ブリエンツ湖は、アイガー、メンヒ、ユングフラウのベルナーオーバーラント三山を抱く山岳地方の麓に位置する湖であることを再認識した次第でした。つまり、山の天気は崩れ易いわけで、ブリエンツの朝確認した天気予報は、午後に小雨があるかもしれない程度でした。
この日、設計した行程の半ば、イゼルトヴァルトを通過した地までは幸運。休憩後、北に向けて漕ぎ始めたら、雲が増え、陽光が失せ始め、雨粒がポツリ・・・。幸い、南西方向からの追い風でした。
崖が連なる東湖岸には散策路があり、時々、ジョギング、散策する人との遭遇があり、笑顔で挨拶(と言っても Hallo!程度)を交わすのんびりした行程でした。
がしかし、次第に雲が広がり、困った湖上環境、即ち、呑気に景色を眺め、写真を撮るには、陽光が失せた風雨模様になったのです。さらに、南西の風と雨粒が強くなる天候が次第に増えたのです。困惑至極でした。
転じて、好天の湖山池西南域で漕艇中、青島大橋南詰の出艇地に向かう際に、予報外の雲が北東から寄せ、風雨になったことがあります。向かい風の中、時には10m/s.程度の強い風が吹いていたでしょうか・・・、パドルを休めることなく、セッセと漕ぎ続けました。艇の安定を保ち、漕ぎ続けることが最も安全ゆえに。
艇が進みにくいほどの強い向かい風・風雨を避けるために、漕艇距離が長くなる団子島の南西至近地まで迂回し、少し休憩したほどでした。が、風雨が続くとの理解で、再出発し、風よけとなる青島先端部の(風が弱まる南)麓湖域をめざして、力強い漕艇を続けました。
強い向かい風ゆえに、パドルを上げた際に水しぶきを顔に浴びることが再々あり、また、波立つ湖上で、艇が前後に揺れ、艇底がバシャと湖面に落ちてしぶきを上げることも・・・。
この稀有な機会を思い出したほどに、ブリエンツ湖の北湖域でも風雨が強まったのです。目的地のブリエンツの街は湖の北西端にあります。
東湖域に居て、風に流され、北東端の湖岸レジャーで賑わう地に移動し上艇しても、約10kgの艇を抱えて、湖畔の散策路をブリエンツ駅まで移動する陸上での労作が負荷されます。
ブリエンツの街に艇を向けると、左・南西方向からの強風により、横波を制御する漕艇になります。実際、左手のパドルで艇の方向を制御し、右手で強く漕ぎ、艇を進める労作負荷を強いられました。
パドリングを止め、景色を眺めつつの写真撮影は、危険を伴います。つまり、横風・横波を受けて、転覆の危険性が生じます。
と言う経緯で、この日の後半は(非防水愛用のデジカメ保護の観点を含め、)写真撮影は諦め、ブリエンツに向けてセッセと漕ぎ続けたのです。
ブリエンツの街に着く頃には、雨は上がり、強い日差しに恵まれました。が、南北に長いブリエンツ湖で風が吹き続いていたため、写真は撮れず、安全のためセッセと漕ぐ労作を余儀なくされました。
一方、晴れ間に誘われ、沖から近づくカヤックに興味を抱き、見ていた人たちがいたのでしょう。
艇から安全に上がるために、ボートが係留されている(防波堤の中に相当する)エリアに艇を進めました。周囲の歩道を構築する金属支柱を左手でしっかりと把握!安堵しました。
一方、この時点で、若者たちが近接し、右手を繋ぐがごとく、手を伸ばす男性も!が、手つなぎは、滑ることもあり、危険です。(濡れないように袋に入れた)電動ポンプと艇先につないだロープを右手でつかみ、支柱も握り、上艇を図りました。一方、若者たちの心意気に応じて、電動ポンプを入れた袋とロープの先端を「Thank you!」と発し、委ねました。
なお、左手・北側は公園相当地で、左足で膝下が水中になる深さですが、石段がありました。主に左手で身体を起こし、上陸しました。この頃には4-5人の応援君たちが手を伸ばして来るので、(致し方なく、好意に応えるべく)笑顔で「Thank you!」を発しつつ、艇を上げる支援を得ました。
で、艇上げた後に記念撮影(笑)。
カヤック14年目にして、初めて、応援団が寄って来た次第でした。
なお、優雅に漕ぎ続ける予定が狂い、誤算が生じました。(復路は列車指定で格安の乗車券購入済でしたが、)①早くに目的地ブリエンツに到着してしまったこと、②後半のコースは及第点評価の写真・動画撮影に至らなかったこと、③四肢・体幹の筋肉疲労を感じたことです。
公園のベンチに座し、濡れた服を乾かし、日光浴をし、やおら艇の空気を抜き、専用袋に収納作業も・・・。持参の水は飲んでいたため、自販機の水を初めて購入(高価でCOOPで買う約3倍!)
結果論ですが、高山に近い地ゆえに、天候の崩れには留意が必須で、ロングコースでのカヤックはこの機会のみとして、観光地主体のレジャーカヤック湖域での漕艇を再編成しました。
カヤックは、航空機の離発着同様、離陸(出艇)時と着陸(艇から上がる:上艇)時に留意が必要で、とくに、後者は危険を伴います。
また、安全な漕艇のために、筋肉疲労を感じる状況では、出艇しません。翌日は雨天予報で、翌々日は「乗り鉄」とし、初探訪地を訪れることにしました。既に、筋肉疲労は感じないほどでしたが、安全確保のために一日余分に休みました。
今回、スイス単独行でのカヤックは、自身の力が分かるがゆえに、安全だとの自己評価で臨みました。初心者は伴えませんし、熟達者が同伴の際は、小生が自身の力量以上に頑張らざるを得ない危険性もありましょう。危機管理に係る全ての想定・シミュレーションは、常に生涯研修相当です。
追記)自身の山歩きは、国内では地元の大山、スイスでは(中級者レベルまでの)トレッキングレベルです。日本100名山を達成・・・などの方がおられる一方、大山でも遭難する方がおられます。
限られた休日に、つい、無理な登山をし、天気予報・体力を軽視し、救命のための方々が出動し、幸い、無事帰還出来て家族と笑顔を交わす結末の例、稀には、涙で冷たくなった状態での対面・・・。(祈)
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◆ 鳥取県東部医師会報 2025年1月号掲載予定の原稿です。